私PATAは10年以上葬儀業界で働いて参りました。
その際に、様々な家族のディープ過ぎるストーリーを近くで見てきたわけであります。
『事実は小説よりも奇なり』とはまさに言い得て妙だと感じており、今回記事にまとめてみたいなと思った次第でございます。
若干ヘビーな内容ではありますが、実際に私PATAが現場で携わってきたお客様のお話ばかりです。
それではご覧ください!
交通事故
これは私PATAが現場を担当したお客様のお葬式での話です。
亡くなられたおじいちゃんは、自転車に乗っていた際に左折するトラックに巻き込まれ帰らぬ人になってしまいました。
トラックの左折時の後方確認が甘かったための悲劇です。
トラックの下に入り込んでしまったおじいちゃんは左前輪で頭を轢かれ、ドライバーが違和感を感じその場でバックをし、更にもう一度頭を轢かれる痛ましい交通事故死。
ご遺族の悲しみはあまりにも深く、かける言葉が見当たらないような状況だったのを覚えています。
それにあわせて、家族の命を奪ったドライバーへ対する怒りや憎しみも相当なもの。
最善を尽くすべくご遺族に寄り添い、打ち合わせを行いお葬式の段取りを進めていきます。
お亡くなりになったおじいちゃんの顔は交通事故時の損傷が激しく、とてもお別れしていただける状況ではありません。
映画でご存知の方も多い『おくりびと』と呼ばれている納棺師により死化粧を施し、生前のお顔に近付けるのが一般的ではあるものの、今回ばかりは難しい案件です。
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特殊メイクに近い技ではありますが、全体のバランスをはかり『顔を作る』作業を行い化粧で整えていき、損傷のより強い頭部には帽子を被せて対応することにしました。
事故死特有の臭いも相当なものではありましたがキッチンハイターを活用し臭気を弱め、なんとかお別れができる状態へと辿り着きます。
ご遺族も涙ながらに喜んでくださり、突然のお別れではあったものの暖かいお見送りができたお葬式になったわけです。
出棺の段を迎え霊柩車に棺をお納めし、火葬場へ向かおうとしたその時です。
10m程離れた道路上には喪服に身を包んだ5名程の大人が神妙な面持ちで一列に並び、深々と霊柩車に向かって頭を下げているのが目に飛び込みます。
その中の一人は道路上で土下座をし額を地面に擦り付けているのがわかります。
彼らは事故を起こしたトラックのドライバーが勤める会社の役員だったのです。
誰も言葉を発することができずに時間が止まったような感覚が場を支配します。
葬儀に至るまでのこの間、ご遺族は彼らによる一切の謝罪をシャットアウトしていたのですが、まさかの展開に場が凍り付きます。
頭を下げ続ける彼らをそこの場にいないものとして扱い、一瞥することもなくご遺族は車両へと乗り込み出棺して行ったのであります。
と、ここまでが私PATAが実際に現場で体験したお話です。
その後の賠償うんぬんや刑事罰に関してはわかりかねるのですが、あまりの激しさに「ドラマじゃん!」と思ったエピソードでした。
上記の出棺の際の張りつめたピリッとした空気感は、今もなお忘れることができない鮮烈な記憶となっています。
親子喧嘩
私PATAが現場でお手伝いをしたお葬式でのお話です。
非常に愛が深い深い奥様が喪主を務め、配偶者のご主人を送るお葬式でのことです。
参列される親族やご遺族の家族構成などを確認し、全体の参列者の人数を把握するのですが、息子である長男の話が出ると急にピリッとした空気に。
細かな経緯はわかりませんが、察するところ長男との関係が芳しくない様子です。
お葬式当日、ご遺族とは明らかに離れた場所に長男の姿があり言葉を交わす様子はありません。
長男もどこか居心地の悪そうな、バツの悪そうな雰囲気をまとっています。
私PATAを含むスタッフ一同も異様な空気をヒシヒシと感じていたので、喪主の奥様と接点がないように配慮し式を進めていきます。
ですが遂に、火葬場にて今までどうにか均衡を保っていた不穏な空気が爆発することに…
火葬炉に棺が入り、最後のお焼香をする時でした。
喪主を務める奥様、その他のご遺族、親戚へとお焼香の順番が進み、最後に残った長男がお焼香をしようと歩を進めたところ、喪主の奥様が両手を広げて長男の目の前に立ちはだかり叫びます。
「お父さんに近付くな!!」
80歳を超える高齢の奥様が目に涙を浮かべて両手を広げ、近付こうとする長男を遮ろうとするのです。
火葬場内の職員がまさかの展開に驚き集まりはじめます。
職員に身体を抑えられた奥様は涙ながらに長男へ怒声を浴びせ続け、俯き加減の長男はお焼香をすることなく火葬炉の前をあとにします。
事の経緯はわかりませんが、80歳を超すおばあちゃんが涙を浮かべて長男を遮る姿はあまりにも衝撃的だったのは言うまでもありません。
そして、全てが終了し皆さんがお帰りになるタイミングで長男から声をかけられます。
「お恥ずかしいところをお見せしすいませんでした」
どこか寂しげな表情で声をかけてきた長男。
私PATAはあの時長男に、どのような言葉をかけたら良かったのか未だにわかりません。
葬儀屋とは、一般的に踏み入ることのない領域についても入り込んでしまう特殊な仕事だなと改めて感じたエピソードです。
仲良し夫婦
90歳近くのご夫婦のお葬式の話です。
二人の老夫婦は共に入院していたのですが、奥様が先に亡くなってしまいます。
配偶者であるご主人は入院中のため、お葬式に参列することはおろか、奥様が亡くなったことさえ知らされていないような状態です。
お子様とお葬式の打ち合わせを済ませて、滞りなく準備を行い、当日が来るのを待つのみの状態です。
そんな折にお子様から連絡が入ります。
「たった今、父が亡くなりました…」
お葬式当日の祭壇には仲良しなご夫婦それぞれの遺影写真が飾られており、棺も霊柩車も二人分です。
お子様は「仲が良かったから寂しくて一緒に行きたかったのかな」と笑っておられました。
実際に葬儀業界としてはたまにある話ではありますが、同じタイミングで葬儀を行うケースは若干レアだと言えるかもしれません。
『おじいちゃんが亡くなった二週間後におばあちゃんが亡くなる』みたいなパターンが一番多いわけですが、この際に支払う葬儀代は二人分なので、今回の場合であれば費用を約1.3倍程度に抑えられるので家族にも負担が少ない稀なケースです。
ちなみに一番気の毒だった例としては、お葬式が終わった当日の夜に喪主が亡くなる事例でした。
事実は小説より奇なりと言わざるを得ませんね…
まとめ
特別に印象に残る3つのエピソードを紹介しましたが、実は他にもたくさん記憶に残るお葬式があったりします。
若い後妻の奥さんが「遺産目当てじゃないか?」と親族全員からフルシカトされていたり、生後数日で亡くなった新生児のお葬式だったり、お通夜に来た弔問客が倒れて数日後に亡くなったり、練炭を使った無理心中であったりと、テレビドラマ顔負けのような話が多く存在しています。
他には、弔問客や供花の札の中に有名人がいたなんてこともあったりとエピソードには事欠きません。
面白く笑える話や感動的な話ばかりではなく、人間の汚い部分やわがままで横柄な部分なんかも目の当たりにして、嫌な気持ちになることもしばしば。
普通に生活していれば経験することのない場面に遭遇したりと、良くも悪くもいい経験だったと思います。
とりあえず、健康的に過ごしてお葬式に縁がないようにするのが一番ではありますが…
それでは、最後までお付き合いありがとうございました!!
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